花と果実に関する基礎知識


<1> 花

(1−1) 花(被子植物)の構造



                      被子植物の両性花の模式図

(1−2) 花と植物の種類

   胞子植物(隠花植物):胞子生殖
   種子植物(顕花植物):種子生殖
    裸子植物:胚珠が露出。
    被子植物:胚珠が子房のなか。
      単子葉類:子葉が1枚。
      双子葉類:子葉が2枚。
       離弁花:花弁が融合していない花冠を有する。
       合弁花:Sympetalae:花弁が融合した花冠を有する。ただし融合の程度は多様。
  
離弁花                    合弁花

    完全花(perfect flower) :がく、花弁、、おしべ、めしべの4要素を有する。一つでも欠くと不完全花。
    単性花:(unisexual flower) :おしべ、めしべの一方を欠く。
      雌花:(female flower)
      雄花:(male flower)
    両性花:(bisexual flower) :おしべ、めしべの両方を有する。

    偽花:多数の花が集まって(頭状花序)一つの花のように見える。

偽花(ゴゼンタチバナ)

    雌雄両全株 (Hermaphrodite) :両性花のみをもつ。
    雌雄同株、雌雄異花同株 (Monoecious) :雌雄の単性花の両方をもつ。
    雌雄異株 (Dioecious) :雌雄どちらかの単性花のみをもつ。
    雌雄混株、不完全同株 (Subdioecious) :両性花と共に、雌花または雄花もしくは両方をつける。


(1−3) 花序

  植物の花には個々ばらばらに規則性なしに咲くものがあるが、花の集団がある一定の規則性、形状をもって配列するものもあり、
 この花の集団の咲き方を花序(inflorescence)といい、果実の場合は果序(infructescence)という。(果序は花より子房の集合に依存)

  花梗、花柄(peduncle)・・・花序を支える茎。
  小花柄(pedicel)・・・単一の花を花序に着ける茎。花が直接茎についている場合を無柄という。
  花茎(scape)・・・花だけをつける茎。
  花軸(rachis)・・・あいまいなことばのようである。多くは花序を形成している場合の花柄を指す。
             rachisは葉だけの場合も指している。


  頂芽terminal budと腋芽axillary bud


  定芽(definite bud)
   頂芽(terminal bud)・・・茎の頂端に形成
   側芽(lateral bud)・・・茎の側方に形成
     腋芽(axillary bud)・・・葉の向軸側の腋に形成
  不定芽(adventitious bud)
   茎上不定芽(cauline bud)・・・シダ植物
   葉上不定芽(epiphyllous bud)・・・
   根上不定芽(radical bud)・・・


 (A) 無限花序・・・花を形成する枝の先端が成長しながら、側面に花芽を作って行く、つまり枝の先へ成長。

  総状花序(raceme)・・・有柄の花が円錐、円柱状に並ぶ。
                 総状花序で無柄のものは直立形を穂状花序(spike)、下垂形は尾状花序(catkin)。
  散房花序(corymb)・・・総状花序で花柄が下ほど長くなり、その結果、なだらかな曲面状に花が並ぶ。
  散形(傘形)花序(umbel)・・・散房花序で花と花の間(節)がなくなり1か所から咲いたような形に花が並ぶ。
  頭状花序(capitulum)・・・散形花序で無柄になり、平面状になったもの。花序全体が1個の花のようになる。(偽花:pseudanthium)
                  極端なものは球状の頭状花序(head)。

 (B) 有限花序・・・花を形成する枝の下方に芽が形成されていく、つまり枝の下へ成長する。

  集散花序(cyme)・・・花を形成する中心の枝でなく中心の枝の脇から枝が出て次々に分岐していく花のつけ方。

 (C) 複合花序(compound inflorescences)

  頭状花序が更に別の花序を形成する場合やある花序が更に総状花序を形成するものなどがある。
  円錐花序(panicle)・・・総状花序が総状花序を形成、個々の花序が上から下へより激しく、不規則に分岐し、円錐形を呈する複合花序。
  団集花序、団散花序(glomerule)・・・短い枝の周りに,柄のない花が密につき,球形あるいは長楕円形をなす.。(散形花序が球形で無柄)  
                   ヤナギイチゴ、ハドノキOreocnide pedunculata  イラクサ科 ミズキ属
                あるいは有柄で散形花序が球形になった形状や集散花序で仮軸がなくなり、主軸の頭頂から次々に分岐して球形
                になった(岐散花序で仮軸が詰まった)状態などを指しているのがみられる。
 (D) 特殊な場合

  隠頭花序(イチジク状hypanthodium)・・・花托(receptacle)が多肉化し中央が陥没し壺状となり内部に多数の花が詰め込まれた状態。
  杯状花序(cyathium)・・・多数の花が,総苞の内部に包まれていて,花序全体が一個の花のようにみえる。トウダイグサ類。

 (E) 苞(苞葉:bract )・・・花や花序の基部にあって、つぼみを包んでいた葉のことをいう。苞葉ともいう。また個々の苞を苞片という。
                  通常、葉より小さくて緑色をしたものである。しかし、花弁や萼に見える場合ある。
                  花序全体の基部を包む苞を総苞といい、個々の総苞を総苞片という。

  無苞花序・・・花序を形成する個々の花に苞がない。フジ
  有苞花序・・・花序を形成する個々の花に苞がある。タカネシオガマ
  葉状花序・・・花序を形成する個々の花に葉のような苞がある。
  葉状苞花序・・・有苞花序と葉状花序の中間。


 *偽花pseudanthium・・・花序全体が1個の花のように見える。

  キク科やマツムシソウ科の頭花 (頭状花序) における総苞片ははっきりしている。
  特殊な総苞片としては、
  ・殻斗 (cupule, cupula) :ブナ科では多数の総苞片がその軸と共に合着し、殻斗とよばれる椀状の構造を形成することがある。
                 いわゆるドングリの"はかま"がこれにあたる。クヌギなどでは合着が不完全だが、シラカシなどでは完全に癒合している。
  ・仏炎苞 (spathe) :サトイモ科では肉穂花序を包む1枚の総苞片がよく目立ち、特に仏炎苞とよばれる。
              ドクダミ (ドクダミ科) やヤマボウシ属 (ミズキ科) の花序の基部にある4枚の大きな葉や、トウダイグサ属 (トウダイグサ科) の
              花序 (杯状花序) の杯状体などもよくめだつ構造で総苞片とみなされることが多い。
  多くのセリ科のように複合花序をつくるものでは、大花序の苞のことを総苞、小花序の苞を小総苞 (involucel) とよぶ。
  小総苞の構成単位が小総苞片 (involucel segment) である。イネ科の小穂は小花序であり、その基部にある1対の苞穎 (glume) は
 小総苞片と見なすことができる。

  個々の花の基部につく苞葉のことを小苞 (bracteole, bractlet) という。
  小苞葉は双子葉植物では2個、単子葉植物では1個のことが多いが、その有無や数には変異も多い。
  スゲ属 (カヤツリグサ科) の果胞 (perigynium) は特殊化した小苞と考えることができる。

  単子葉植物において、花序に腋生する有鞘葉を苞鞘 (苞鞘片 bract sheath) という。

 (F) 球果

  球果類において、胚珠をつけた種鱗 (seed scale) は苞鱗 (bract scale) の腋についている。
  苞鱗も特殊化した苞葉と見ることができる。

  果鱗 (cone scale) :球果類の球花 (球果) を構成する特殊化した葉を果鱗とよび、苞鱗 (bract scale) と種鱗 (seed scale、ovuliferous scale) が
               さまざまな程度に癒合してできている。
               苞鱗は被子植物における苞葉 (小苞) にあたり、種鱗は胚珠をつけるので花葉 (心皮) に相当する。
               マツ科では種鱗と包鱗が分離しているが、スギ科では様々な程度に癒合。
               種鱗複合体(球果)は球果軸のまわりにらせん配列しているものが多く見られるが、ヒノキ科やメタセコイアでは十字対生に配列。

(以上大阪市立自然史博物館から引用)                    Pinus pungensの未熟果


 (F) 葉序(phyllotaxis)

  互生葉序alternate phyllotaxis
    螺生葉序spiral phyllotaxis
  対生葉序opposite phyllotaxis
    十字対生decussate opposite
    2列対生distichous opposite
  輪生葉序verticillate phyllotaxis


UVEDから引用


 (G) 花序の概念図

 (G−1) 無限またはracemose(総穂花序)、単軸性(monopodial)、開放花序

  
   総状花序(raceme)    穂状花序(spike):直立   尾状花序(catkin):下垂    散房花序(corymb)    散形(傘形)花序(umbel)

     
  頭状花序(capitulum)、偽花      密繖(密散)花序     団散花序

*ヒマワリを頭状花序とするがいかがなものであろうか、中国のサイトでは頭状花序(head)と盤状花序(capitulum)と区別している。
 更に頭状花序(head)と団散花序(glomerule)の違いは、花托というより花床が膨らんでいるか、ほぼ花柄の太さであるか、従って個々の
 花が面的に分布しているか、それとも狭いほぼ一点から咲いているかで区別するべきであろう。



 (G−2) 有限またはcymose、仮軸性(sympodial)、封閉花序
        
集散花序(cyme) 展開例→ カタツムリ状花序Bostryx 巻散花序Drepanium   サソリ型花序Cincinnus  扇状花序Rhipidium    岐散花序Dichasium

  
   ブドウ状花序        胚状花序(Cyathium)     隠頭花序                  

 (G−3) 複合花序
 


          
円錐花序(panicle)   藺状花序(凹形集散花序、イグサ形花序)   密錐花序                          輪状集散花序(輪散花序)





<2> 心皮と子房

 以下は多くを筑波大BotanyWEBによりました。

(2−1) メシベと心皮

  メシベ(pistil)の概念上の構成単位を心皮(carpel)といい、柱頭(stigma)、花柱(style)、子房(ovary)からなり、子房内部には胚珠(ovule)が存在する。
  メシベに花柱がない(sessile)場合もあり(ニワトコ属)、また柱頭の形状は様々である。
  子房には胚珠を包んでいる子房壁、胚珠を含む空間の子房室(locule) があり、子房室は隔壁(septum)で区切られ複数(septa)の場合もある。
  子房が隔壁で仕切られ複数の子房室を有する場合、一つ子房室からなるメシベの単位を心皮(carpel)という概念で示す。
  心皮は向軸(葉の表にあたる)側で内縫線 (inner suture) または腹縫線 (ventral suture)に沿って癒合し、背軸(葉の裏にあたる)側の心皮の中肋は
 外縫線 (outer suture) または背縫線 (dorsal suture)という。(中肋:葉の中央を縦に通っている太い葉脈、主脈)
  心皮はその数と配列、複数の場合、心皮どうしが合着しているか、分離しているかなど分類する。
  心皮の溝、筋(lobe)数は通常、心皮数と一致するが、子房内の偽分離壁の発達により子房室数と心皮数は必ずしも一致しない。
  この心皮の概念とメシベとのあるいは子房室との関係はわかりにくいが以下のように分類される。

単一の心皮 単心皮
Monocarpous carpel
1本のメシベ
複数の心皮 複数の異なる
融合していない心皮
離生心皮
apocarpous carpel
複数のメシベ
複数の融合した心皮 合成心皮
syncarpous carpel
1本のメシベ
(複合メシベ)

  合成心皮での融合の程度は種々で、柱頭から分離している場合、花柱だけが分離している場合、柱頭あるいは花柱が融合し子房
 が分離している場合(キョウチクトウ科)などがある。  参考→福岡教育大


   子房の構造模式図


 <心皮概念の説明>

  シダ植物で胞子をつける葉を胞子葉といい、これを基礎に胚珠をもつ変容した葉を考え心皮とする。
 (ソテツ類では胚珠を付けた葉状構造(大胞子葉)が見られる。) 参照→ソテツ
  めしべはこの心皮から形成されると考える。
  1枚の心皮が折りたたまれ1箇所で縫合すると1心皮のめしべとなる。
  2枚の心皮が2箇所で縫合すると2心皮のめしべとなる。
  
  (つくば大BotanyWEBから引用)
  (2枚の心皮が2箇所で合着すると合生心皮ができ、各心皮がそれぞれ1箇所で閉じると2心皮の離生心皮ができる。)

(2−2) 子房の位置

 子房の位置・・・子房の位置は果実形成に影響する。
   子房上位・・・子房が花被の付け根より上にある。枝側にガクが残る(へた)ことが多い。
   子房周位・・・子房がガク筒(花托筒hypanthium、floral cup、floral tube)と呼ばれる筒状部にあるが、ガク筒と分離。
            筒が果実に残る場合、取れる場合、筒から出る場合がある。
            筒が果実に残る場合は子房下位に似る。
            取れる場合は先側は子房上位に似るが、へたがない。
            筒から出る場合子房上位に似る。
   子房下位・・・子房が花被の付け根より下にあり、ガク筒と融合。ガクが果実の先に残る(花弁やメシベ、オシベも)ことが多い。
            ガク筒が子房の中ほどまで融合している場合は子房中位。




<3> 胚珠と種子

(3−1) 胚珠                                                        
 
                                                                            倒生胚珠の構造

  胚珠は珠心(nucellus)、珠皮(integument)、珠柄(funicle)などから構成され、被子植物では子房内にあり、受精により種子を形成する。
  胚珠は周囲を珠皮という保護層で囲まれ、珠皮は典型的には裸子植物では1層(単珠皮性unitegmic)で被子植物では2層(二珠皮性bitegmic)である。
  珠皮は完全には珠心を囲まず珠孔(micropyle)で開いている。珠心の反対側には合点(chalaza)があり、ここで珠心は珠皮、珠柄と合流する。
  珠柄は胚珠と子房を結び付けており、珠柄が結び付く子房の部位を胎座(placenta)という。
  珠柄は倒生胚珠や湾生胚珠では珠皮とくっついており(へそ:hilum)、合点へ伸びる背線(raphe)を形成している。

 胚珠の型
  直生胚珠 (atropous ovule, orthotropous ovule):胚珠は直立し、胎座・合点・珠孔を結ぶ線が直線状になるもの。
   裸子植物やタデ科、イラクサ科、クルミ科、ハンニチバナ科、イバラモ科などに見られる。
  倒生胚珠 (anatropous ovule):胚珠は倒立し、珠柄が合点近くでほぼ180度湾曲しているもの。
   被子植物では最もふつうに見られ、80%以上の科がこのタイプの胚珠をもつ。
  湾生胚珠 (campyrlotropous ovule):胚珠は倒立し、内部の珠心組織も湾曲するもの。胚嚢は倒生状態で湾曲しない。
   ナデシコ科やアブラナ科、アカザ科、フウチョウソウ科、マメ科などに見られる。
  半倒生胚珠 (hemitropous ovule):胚珠は横向きで、合点・珠孔を結ぶ線が胎座と平行であるもの。
   サクラソウ科やマメ科に見られる。
  曲生胚珠 (amphitropous ovule):胚珠は倒立し、内部の珠心も胚嚢も湾曲するもの。
   ナズナ属 (アブラナ科) に見られる。
  拳卷胚珠 (circinotropous ovule):珠柄が長く、全体で180度湾曲しており、胚珠が倒立しているもの。


        胚珠の型の模式図

 胎座の子房室での分布(胎座型)




  縁辺胎座 (marginal placentation):1枚の心皮からなり、心皮の縁辺近くに胚珠が2列につくもの。
         キンポウゲ科の多く 、メギ科、マメ科などに見られる。
  中軸胎座 (axial placentation):複数の心皮からなり、子房室は隔壁で仕切られて心皮数と同数で心皮縁辺が巻き込んでつくられた中軸に胚珠がつくもの。
        ユリ科、アヤメ科、ウマノスズクサ科、オトギリソウ科、ツツジ科、アカバナ科、カタバミ科、フウロソウ科、オオバコ科、キキョウ科などに見られる。
  側膜胎座 (parietal placentation):複数の心皮からなり、子房室は1室で各心皮の縁辺近くに胚珠がつくもの。
        イグサ科、ラン科、ヤナギ科、スミレ科、ミツガシワ科、リンドウ科などに見られる。
  独立中央胎座 (特立中央胎座 free central placentation):子房室は1室で遊離した中軸に胚珠がつくもの。
        ナデシコ科やサクラソウ科にみられる。
  面生胎座 (laminar placentation):子房室は1室で心皮の内面全面に胚珠がつくもの。
         スイレン科、アケビ科、トチカガミ科などにみられる。
  基底胎座 (basal placentation):少数個の胚珠が子房の基底部につくもの。
        単一子房のもの (キンポウゲ科やバラ科の一部) と複合子房のもの (ミクリ科、カヤツリグサ科、コショウ科、タデ科、イラクサ科、ムラサキ科、
        シソ科、キク科、カヤツリグサ科など) がある。
  頂生胎座 (懸垂胎座) (pendulous placentation):少数個の胚珠が子房の頂端部につくもの。
        単一子房のもの (キンポウゲ科の一部) と複合子房のもの (ミズキ科、セリ科、スイカズラ科、オミナエシ科など) がある。


(3−2) 種子と種皮

  メシベの子房にある胚珠は有性生殖により種子となる。
  種子は胚(embryo)と胚乳(Endosperm)を種皮(seed coat)で保護している。
  種子の種皮には胚珠が子房壁あるいは珠柄についていた跡であるヘソ(hilum)が存在する。
  豆類のように胚乳のない無胚乳種子があり、無胚乳種子では養分は子葉に蓄えられる。

 

  種皮 (seed coat, testa) とは珠皮に由来する種子の被覆物である。
  珠皮と同様、種皮は1枚か2枚からなり、2枚の場合、外側を外種皮 (outer seed coat, testa, episperm)、内側を内種皮
  (inner seed cpat, tegmen, endopleura) とよぶ。
  被子植物では2種皮性 (bitegmic) が原始的な状態であり、モクレン科や多くのバラ目群、単子葉植物に見られる。
  一方、1種皮性 (unitegmic) は派生的な状態であり、キク目群などに見られる。またヤドリギ科やツチトリモチ科など寄生植物の中には
 種皮を欠如するものもある。

  2種皮性の種子の中で、外種皮が機械組織になっているものを外種皮型種子 (testal seed) とよび、内種皮が機械組織になっているものを
 内種皮型種子 (tegmic seed) とよぶ。
  外種皮型種子では外種皮の外表皮が硬化するもの (キンポウゲ科、マメ科)、中層が硬化するもの (バラ科、フトモモ科)、内表皮が硬化するもの
  (モクレン科、アブラナ科) がある。
  一方内種皮型種皮では内種皮の外表皮が硬化するもの (ニシキギ科、フウロソウ科) と内表皮が硬化するもの (コショウ科、ドクダミ科) がある。
  1種皮性の種子では、ふつう外表皮が機械組織になっている。

  動物に被食散布される種子では、外種皮が肉質化して被食部になっているものがあり、このような種皮を肉質種皮 (sarcotesta) とよび、
 ジャノヒゲ (スズラン科)、モクレン属 (モクレン科)、ザクロ (ザクロ科) などにみられる。

  裸子植物では種皮は1枚であり、ふつう外層・中層・内層に分化している。
  例えばイチョウ (イチョウ科) では外層が液質でカプロン酸を含み異臭を放ち、中層は木質、内層は膜質になっている。

    以上筑波大BotanyWEB

    以下ウィキペディア英語版

  種皮(seed coat)は胚珠の珠皮 (integment) から形成される。
  種皮は薄い層であったり、厚く、堅かったり、あるいはザクロの肉質種皮(sarcotesta)のように果肉質であったりする。
  ふつう胚珠の中で、珠心は1枚か2枚の珠皮 (integment) で覆われている。
  珠皮が1枚のものは単珠皮性(unitegmic)、2枚のものは二珠皮性(bitegmic)という。
  (裸子植物の胚珠は単珠皮性、被子植物では単珠皮性または二珠皮性である。)
  二珠皮性の場合、内側の珠皮を内珠皮 (inner integment)、外側の珠皮を外珠皮 (outer integment) とよぶ。
  二珠皮性胚珠では外珠皮から外種皮(種皮testa)、内珠皮から内種皮tegmenが形成され 内外種皮から堅い保護機械層が形成される。
  外珠皮は多くの層、一般的には4〜8層からなり3層に組織される。すなわち外表皮(outer epidermis)、外側色素帯(outer pigmented zone:2から5層で
 タンニンとデンプンを含有)、内表皮(inner epidermis)である。
  内テグメン(endotegmen)は内珠皮の内表皮に、外テグメン(exotegmen)は内珠皮の外表面(outer surface)に由来する。
  内テスタ(endotesta)は外珠皮の内表皮に、外種皮の外層は外珠皮の外表面に由来し外テスタ(exotesta)と呼ばれる。
  もし外テスタが機械層ならば外テスタ性種子とよばれるがもし機械層が内テグメンなら種子は内テスタ性である。
  外テスタは1から2列の細胞でこれが長く引き伸ばされ柵状(pallisade)なら柵状外テスタ。
  3つの基本的種子部分に加え、種子は仮種皮(aril)という珠柄から生じた多肉質の付属物、あるいは油状付属物−エライオソーム、あるいは綿毛(hair)を
 有することがある。
  他の付属物は背線(raphe:うねridge)、翼(羽wings)、種枕(caruncle:珠孔付近の外珠皮からの柔らかい海綿状生成物)、トゲspine、結節tubercle。
  ヘソhilum(子房壁あるいは珠柄についていた跡)と呼ばれる跡も種子に存在する。ちょうどその下に胚珠の珠孔を示す小さな穴がある。

 *肉質種皮(sarcotesta):果肉質の種皮でテスタ(testa)の1種。例はザクロ(pomegranate)とソテツ(cycad)。
  ザクロの種子は珠皮integument由来の表皮細胞epidermal cellからなり、アリルはない。
  (いつも堅い内側のsclerotesta(硬種皮)と存在。被子植物ではモクレン科マメモドキ科に存在。sclerotestaは2層の珠皮integumentあるいは
  その一部から形成。 以上ドイツ語ウィキペディア )

<4> 果実

  果実(fruit)は通常、子房から形成され、子房壁は果皮(pericarp)となり、多肉質(柔らかい)で多汁質な部分を果肉(sarcocarp)と称する。
  正確にはFlesh(果肉の総称)、Sarcocarp:(核果の果肉)、Pulp:(果肉の中でも水分が多く柔らかいもの)と呼ばれる。
  果皮は通常、3層に分化し表側から外果皮(exocarp、薄い膜はepicarp)、中果皮(mesocarp)、内果皮(endocarp)といい、
 果肉は通常、中果皮から形成される。(例外として偽果)
  一般的に果肉は果皮が分化した部分、花托、ガク、仮種皮(aril)などから形成される。

 ・偽果皮:子房下位では子房は花托筒やガク筒に囲まれ、果実はこれから生じた部分に囲まれる。
       このようにして果皮様の部分が子房以外の部分からできる場合、偽果皮という。
 ・偽果(accessory fruit)・・・果実はめしべの子房に由来する種子を包む部分(果皮)の多肉、多汁な場合であるが、
                  多肉、多汁な部分が子房以外、ガクや花托(花床)等に由来する場合、偽果という。

(4−1) 果実の分類(筑波大を参考、ただしわかりやすいように若干変更。) 

 果実とは種子を含み、種子を覆い、保護する部分である。

・大きな分類
  単果(simple fruit)・・・1個のメシベをもつ一つの花から生じたもの。
   乾果(dry fruit)・・・果実の皮(果皮)が乾燥した状態。
    裂開果(dehiscent fruit)・・・成熟すると特定の箇所で裂け、種子を放出。
    閉果(indehiscent fruit)・・・成熟しても裂けて開かない。
   液果・・・少なくとも果皮の一部が多肉質または液質 (つまり果肉) となる果実。
  集合果・・・1つの花の複数の子房に由来する果実。
  多花果・・・複数の花の子房に由来する果実。

・詳細分類

  (A) 乾果(dry fruit)

   (A−1) 裂開果(dehiscent fruit) 
            裂開する場所はさまざまであり、向軸側で心皮の両縁が癒合した部分 (内縫線 inner suture, ventral suture) や
            背軸側で心皮の中肋にあたる部分 (外縫線 outer suture, dorsal suture) などがある。
    ・袋果(follicle):1心皮からなり、内縫線または外縫線で裂ける(1箇所)もの。2個以上の種子を有する。
    ・豆果、莢果(legume、pod):1心皮からなり、内縫線と外縫線両方で(2箇所)裂けるもの。マメ科など。
    ・節果、分節果、節莢果(loment):1心皮からなり、各種子が横に(種子の間が)締め付けられ(節)、この締め付け部(節)で
                          複数の分果 (mericarp) に分かれるもの。分果は1種子を含む。ヌスビトハギ
 
ヌスビトハギ(節果)       袋果

    ・刮ハ(さくかcapsule):複数の心皮(区域locule、septaで区切られる)からなり、複数の種子を含む裂開果。
                  裂開する位置で分類。
      角果:2心皮性で間に隔膜 (replum) があり、縦に2片に裂けるもの。
       長角果(silique, siliqua):
       短角果 (silicle, silicule) :
      胞背裂開果(Loculicidal capsule):各心皮背面の中央線 (外縫線) で裂けるもの。

Tulipa agenensis

      胞腹裂開果(ventricidal capsule):各心皮の内縫線で裂けるもの。

Dictamnus albus

      胞間裂開果(Septicidal capsule):心皮の境界線で裂けるもの。
      胞軸裂開果(Septifragal capsule、valvular capsule):心皮の背面中央線 (外縫線) と心皮間の境界線の両方で裂けるもの。
      孔開刮ハ(Poricidal capsule):先端や側壁に孔が空きそこから種子が出るもの。
      蓋果 (胞果、pyxis、Circumscissile capsule、pyxidium、 lid capsule) :横に裂開して上部が蓋のようにとれるもの。
    ・分離果(schizocarp):複数の心皮からなり、心皮ごとに分離して複数の分果 (mericarp, coccus) に分かれるもの。
                  分果は1種子を含む。分果が裂開するものと裂開しないものがある。
    ・双懸果(cremocarp):2つの分果がぶら下がっており、縦に2つに分離するもの。

   (A−2) 閉果(indehiscent fruit)

    ・痩果 (achene, akene):1心皮からなり、1種子を含むもの。果皮と種子は癒合していない。果実自体が種子のように見える。
    ・下位痩果 (菊果 cypsela):複数の心皮からなり、1種子を含むもの。子房下位で果皮が花托と癒合している (偽果)。キク科など。
    ・頴果 (穀果 caryopsis):複数の心皮からなり、1種子を含むもの。果皮と種子が癒合しており、頴 (内穎と外穎) で覆われる。イネ科など。
    ・胞果 (utricle):複数の心皮からなり、1種子を含むもの。果皮はゆるく種子を包む。
       横裂して裂開するものは横裂胞果 (pyxidium, circumciscissile utricle) とよばれる。
    ・堅果 (nut, glans):複数の心皮からなり、1種子を含むもの。果皮は木質化している。ドングリ類など。
    ・小堅果 (nutlet, nucula, nucule, nuculanium):小形の堅果。痩果に含められることもある。
       カヤツリグサ科の小堅果は1対の苞葉からなる袋に包まれており、特に嚢果 (utricule) ともよばれることがある。
    ・翼果 (samara):果皮の一部が花後に成長して翼になるもの。果実本体の形状は問わない。
      (果皮ではなく萼や苞葉が翼になったものは狭義の翼果からは除かれる。)

  (B) 液果(fleshy fruit、bacca)

    ・漿果 (真正液果 berry, bacca):内果皮も中果皮も多肉質な液果。   
       単漿果 (simple berry):1心皮性の漿果。マツブサ科やメギ科などに見られる。  
       複漿果 (compound berry):多心皮性の漿果。単に漿果ということも多い。ブドウ科やナス科に見られる。  
    ・ミカン状果 (柑果 hesperidium, hespidium):多心皮性の漿果であり、油細胞を含む外果皮 (フラベド flavedo)、海綿状の中果皮 (アルベド albedo)、
              膜質の内果皮からなる。内果皮の内側には果汁に富んだ毛をもつ。ミカン科ミカン連に見られる。  
    ・ウリ状果 (瓠果 pepo):3心皮性の漿果であり、花托筒が外果皮と癒合して硬化し、中果皮・内果皮は多肉質で海綿状になる。
                    ウリ科トウナス連に見られる。     
    ・ナシ状果 (仁果 pome):多心皮性の漿果であり、子房を覆う花托が多肉質になるもの。バラ科ナシ亜科に見られ、リンゴが好例。偽果。 
                   (複数の種子を含む領域である子房から形成される芯coreが区別される)
                   ザイフリボク属(ジュンベリー等)。コトネアスター、サンザシ、ピラカンサ、ロワン(セイヨウナナカマド)、ホワイトビーム
                   マルメロ、ヘテロメレスHeteromelesなど。
    ・核果 (石果 drupe):内果皮が木質化して核 (果核) になった液果。
                  (1個の堅い殻をもつ種子を含む、殻の中には複数の種子がある場合も−センダン。)
                  本来はバラ科サクラ属 (サクランボ、モモなど) に見られるように1心皮性のものを意味していたが、モクセイ属 (モクセイ科) や
                  センダン (センダン科)、モチノキ科のように複数の心皮からなるものも含まれる。
                  またミズキ科やスイカズラ科の核果は花托筒由来の偽果皮を含む。
    ・小核果 (drupelet):小形で1心皮性の核果。ふつう集合果 (キイチゴ状果) を形成する。キイチゴ属 (バラ科) に見られる。

    *核果(drupe)の分類
      Freestone
      Clingstone
      クルミ状果Tryma
      fibrous drupe
      小核果 (drupelet)

  (C) 特殊なもの
   ・アケビ
   ・ザクロ
   ・ケンポナシ


(4−2) 主な液果の構造

<<核果>>

   核果drupeの模式図                モモ                       アプリコット

<<ナシ状果(仁果)>>

ナシ状果(仁果)pomeの断面(リンゴ)  ヨウナシ

<<漿果(berry)>>

漿果(berry):ブドウの模式図                       柿


ブルーベリー           クランベリー                        アロニアベリーAronia melanocarpa グースベリー


(4−3) 果実の外観

  果実の外観は枝側では花托、花柄の影響、メシベ側ではメシベの痕跡、子房の位置などに影響される。

福岡教育大植物形態学から引用


     
トマト                     ロウバイ   ハマナス         リンゴ

 偽果(仮果) false fruit (pseudocarp)・・・子房以外の花床、萼、総包等が成長し果実となる。子房下位でなりやすい。
  イチゴ状果・・・花托が発達し果実に加わる Ex. リンゴ、ナシ、オランダイチゴ
  クワ状花(sorosis)・・・花被等が発達し果実に加わる Ex. クワ、パイナップル
  イチジク状花・・・花軸と花托が多肉となり果実に加わる


(4−4) 集合果と多花果 

  集合果(aggregate fruit)・・・1つの花の複数の子房に由来する果実。
    集合痩果:1つの花に由来する多数の痩果が集合したもの。
            キンポウゲ属 (キンポウゲ科) やダイコンソウ属、キジムシロ属 (バラ科) に見られる。
    集合袋果:1つの花に由来する多数の袋果が集合したもの。
            モクレン属 (モクレン科) やオダマキ属 (キンポウゲ科)、ヤマグルマ属 (ヤマグルマ科) に見られる。
    集合漿果:1つの花に由来する多数の漿果が集合したもの。マツブサ科などに見られる。
    集合核果(キイチゴ状果):1つの花に由来する多数の小核果が集合したもの。キイチゴ属 (バラ科) などに見られる。
    バラ状果 (cynarrhodium):壺状の花托が肥大し、中に多数の痩果があるもの。偽果である。バラ属 (バラ科) などに見られる。
    イチゴ状果 (etaerio):花托が肥大して液質になり、表面に多数の痩果があるもの。偽果である。
                  オランダイチゴ属やヘビイチゴ属 (バラ科) などに見られる。
    ハス状果:漏斗状で多数の孔をもった花托が肥大し、その孔に1個ずつ堅果が埋まっているもの。偽果である。
                  ハス属 (ハス科) に見られる。

  多花果・・・複数の花の子房に由来する果実。
   葎果 (ストロビル strobile) ・・・苞葉 (果苞) の腋についた痩果または小堅果が多数密に集まったもの。
   クワ状果 (桑果 sorosis) ・・・花被(と子房壁)が肥厚、多肉化して痩果を包み、それが多数集まっているもの。クワ属 (クワ科) 。
   イチジク状果 (陰花果 syconium) ・・・壺状で多肉質の果序 (陰頭花序に由来する) の中に多数の痩果があるもの。イチジク属 (クワ科) 。
   袋果型多花果 (multiple fruit of follicles) ・・・集合した花がそれぞれ袋果になったもの。
   刮ハ型多花果 (multiple fruit of capsules) ・・・集合した花がそれぞれさく果になったもの。
   漿果型多花果 (multiple fruit of berries) ・・・集合した花がそれぞれ液果になり、癒合したもの。ヤエヤマアオキ属 (アカネ科) に見られる。
   核果型多花果 (multiple fruit of drupelets) ・・・集合した花がそれぞれ小核果になり、癒合したもの。ヤマボウシ (ミズキ科) に見られる。


<5> アリロイド (種皮付属物arilloid)と仮種皮(アリルaril)とエライオソーム  詳しくは→肉質種皮と仮種皮


Alectryon excelsus 刮ハ(capsule)が割れて赤い仮種皮で覆われた種子(黒色)が出る。

(5−1) アリロイド (種皮付属物arilloid)

 アリロイド (種皮付属物arilloid) ・・・珠皮や胎座からできる種子の付属物で糖質や油質に富んでいる。
               動物による種子散布に用いられるが、アリによって運ばれるものを特にエライオソーム (elaiosome) とよぶ。
  種枕 (caruncle) ・・・種子の先端 (珠孔付近) にある珠皮起源の付属物。
               カタクリ属 (ユリ科) やスズメノヤリ (イグサ科)、トウダイグサ属 (トウダイグサ科) などに見られる。
  ストロフィオール (strophiole) ・・・種子のへそ (珠柄との接点付近) にある珠皮起源の付属物。
               クサノオウやタケニグサ、ムラサキケマン、コマクサなどケシ科に見られる。種枕と区別しないことが多い。
  仮種皮 (種衣 aril) ・・・珠柄または胎座が肥厚して種子全体を覆う構造。
       ニシキギ属 (ニシキギ科) やアケビ (アケビ科)、マンゴスチン (オトギリソウ科) などに見られる。
      裸子植物のイチイ (イチイ科) にもある。ふつう液質または肉質であるが、スイレン属 (スイレン科) のものは膜質である。
       ニクズク (ニクズク科) のように珠孔側から発達する仮種皮を偽仮種皮 (偽種衣 arillode) ということがある。
  套衣 (epimatium) ・・・種鱗 (胚珠が付いた大胞子葉の変形物) が肥厚して種子を覆う構造。裸子植物のイヌマキ科に見られる。
               (*マキ(Podocarpus)属に見られるepimatiumに覆われた種子の下部に見られる主に赤色をした部分は
                 花托(receptacle)とされる。)
 (以上筑波大

 (以下ウィキペディア英語版から抄訳)
  アリルまたはアリルス(arillus)は種子からの特殊な生成物で部分的あるいは完全に種子を覆う。
  アリロード(arillode)またはfalse arilはアリルが種子の子房への固着点(珠柄またはへそ)から成長するのに対しアリロードは種皮の
 別の場所から形成されることより区別されることがある。アリルという言葉は顕花植物での種子の多肉な付属物に使用される。
  たとえばナツメグ種子のメース(Mace:種子表面の赤い付属物)。
  プシドアリル(pseudaril)はアリル様構造で通常カンラン科のピレナ(pyrene:核果の石)にみられ、子房の中果皮から形成される。
  (種子でなく内果皮に付着)
  多肉で可食な果皮は2つに割れ、果皮がなくなると黒い種子の周りに明るく色づいたプシドアリルが現れる。
  アリルは果実様構造を形成し、偽果(false-fruit)と呼ばれ、多くの被子植物に見られる。
  リュウガン、レイシ、アキーなどの可食な果肉は果皮層よりも高度に発達したアリルで種子を取り巻く。
  アリルは裸子植物でもいくつかの種にも見られ有名なのはイチイとPrumnopitys andina (Lleuque)、Dacrycarpus dacrydioides(kahikatea)
 のような類縁の針葉樹である。 参照→裸子植物
  多くの裸子植物に典型的な木状の球果の代わりにイチイの生殖構造は1個の種子からなり、これは果肉質なコップ状被覆に囲まれるようになる。
  被覆は高度に変容した果鱗(cone scale)である。


(5−2) エライオソ−ム
  エライオソ−ム(Elaiosome:油状体という意味)は多くの植物種の種子についている多肉質な構造で、脂質とタンパク質に富み種々な形状をしている。
  エライオソ−ムはアリを引き付ける。
  エライオソームは種々な方法で種子組織(合点、珠柄、へそ、背線(raphe:胚珠の縫線)とその反対側(antiraphe))、または果実組織(外果皮、花托、
 花筒(flower tube)、花被(perigonium)、花柱、小穂(spicule))から発達する。
  トウダイクサ科の特殊なエライオソームは種枕 (caruncle) と呼ばれる。

  果実にエライオソ−ムをもつものとしてはスゲ属 (カヤツリグサ科) やシソ科の一部がある。
  種子にエライオソ−ムをもつものにはスズメノヤリ (イグサ科) や ケマンソウ属 (ケシ科)、スミレ属 (スミレ科) など。

(5−3) エピマティウムと肉質種皮
  エピマティウムはマキ(イヌマキ)科の多くの種で成熟した種子のほとんどの部分を覆う高度に変容した多肉質の種皮である。
  種子と球果の発達の間に増大し球果軸方向の外から種子端の珠孔に向かって取り巻くようになる。

  肉質種皮(sarcotesta):果肉質の種皮でテスタ(testa)の1種。例はザクロ(pomegranate)とソテツ(cycad)。
  ザクロの種子は珠皮integument由来の表皮細胞epidermal cellからなり、アリルはない。
  (いつも堅い内側のsclerotesta(硬種皮)と存在。被子植物ではモクレン科マメモドキ科に存在。sclerotestaは2層の珠皮integumentあるいは
  その一部から形成。 以上ドイツ語ウィキペディア) 

  裸子植物の種皮は3層、すなわち肉質種皮(sarcotesta)、硬質種皮(sclerotesta)、内肉質種皮(inner sarcotesta、endotesta)からなる。


(5−4) 可食部の起源<まとめ>

 参照→筑波大

  ・子房壁 (果皮) が被食部になり、種子が排出されるもの 果皮が液質または多肉質になる漿果がこれにあたる。
            ミカン (ミカン科)、ブドウ (ブドウ科)、トマト (ナス科)、キュウリ (ウリ科) など。 カキ。
  ・中果皮が被食部になり、種子を含む内果皮 (核) が排出されるもの いわゆる核果がこれにあたる。
          アボカド (クスノキ科)、ウメ、モモ、さくらんぼ (バラ科)、マンゴー (ウルシ科) などがこれにあたる。
         ラズベリーなどキイチゴ属 (バラ科) の集合果 (キイチゴ状果) は小さな核果の集合体である。
  ・花托筒が被食部になり、果実または種子が排出されるもの リンゴ、ナシやビワ (バラ科) などナシ状果がこれにあたる。
          またハマナス (バラ科) などのバラ状果もこのタイプである。
  ・肥大した花托が被食部になり、花托に付着していた果実 (痩果) が排出されるもの
             ヘビイチゴやオランダイチゴ (バラ科) などイチゴ状果がこれにあたる。
  ・肥大した花被が被食部になり、果実が排出されるもの
            クワ (クワ科) やツルソバ (タデ科)、ドクウツギ (ドクウツギ科) などがこれにあたる。
  ・イチジク (クワ科) ではこれに加えて液質になった花床が被食部になる (イチジク状果)。
     *花床=花托とするものが多く、あるいはイチジクは果軸と花托が肉質化したと表現するものもある。ケンポナシでは果軸が肉質化とするのが普通。
           子房下位では筒状のガク=花托筒といういいかたもする。元来、果軸の花の付け根の部分を花托とよぶので境界はあいまいなのか。
           針葉樹のマキ科では花托は苞葉が変化したものとされる。
  ・種皮の最外層が被食部になり、その内部の種子が排出されるもの このような種皮を肉質種皮 (sarcotesta) とよぶ。
           ジャノヒゲ (キジカクシ科)、モクレン属 (モクレン科)、ザクロ (ザクロ科) など。裸子植物のソテツやイチョウでも種皮外層が肉質化する。
  ・珠柄または胎座が肥厚して種子を覆う被食部になり、種子が排出されるもの このような構造を仮種皮 (aril) とよぶ。
     マサキ (ニシキギ科)、アケビ (アケビ科)、パッションフルーツ (トケイソウ科)、マンゴスチン (オトギリソウ科)、ドリアン (パンヤ科) など。
     裸子植物のイチイ (イチイ科) もおそらくこれにあたる。
  ・種鱗ovuliferous scaleが肥厚して被食部になり、種子が排出されるもの このような構造を套衣 (epimatium) とよぶ。
     裸子植物のイヌマキやナギ (イヌマキ科) に見られる。
     *イヌマキ(Podocarpus属)では種子を覆うのがepimatiumで根元の赤い部分は花托(receptacle)と称する。
 
Nageia nagi            Podocarpus macrophyllus(イヌマキ)



*花托の色々
   ナシ状果
   イチゴ状果
   マキ科
   ビャクダン科エクソカルポス(Exocarpos)属
   ケンポナシ(Hovenia dulcis)は果軸(枝)が肥大、肉質化。
   イラクサ科ヌノマオ属 花托とするとイチゴ状果のような外見
   バラ
   ビワ

          
Pipturus argenteus      Anacardium occidentale Exocarpos aphyllus     Podocarpus totara          Hovenia dulcis(ケンポナシ) Potentilla indica(ヤブヘビイチゴ)
(イラクサ科ヌノマオ属)    ウルシ科(cashew)    ビャクダン科         マキ科                  クロウメモドキ科        バラ科キジムシロ属


 参照→福岡教育大

糞散布体の主なタイプ
果実の名称 花被 花托 花托筒
萼筒
子房壁 種衣 種皮
漿果 × 可食部 なし 保護部 上位子房由来
  × 可食部 下位子房由来
ナシ状果
核果(石果) × 可食部 保護部 薄皮として残存
バラ状果 × 可食部 保護部 周位の花由来
イチゴ状果 × 可食部 × 雌しべ複数
(クワなど) 可食部 ×
× 裂開または
非裂開
可食部 保護部
なし 可食部 保護部


 ・漿果(液果)[berry]
   子房から果肉ができ、種皮が硬い殻の役目をする
   カキノキ(カキノキ科)、ブルーベリー・コケモモ(ツツジ科)、ブドウ(ブドウ科)・トマト・ナス・ピーマン(ナス科)・バナナ(バショウ科)・
  キウイフルーツ(マタタビ科)・スイカ・キュウリ(ウリ科)、ビワ・リンゴ・ナシ(バラ科)、アボカド(クスノキ科)など。
   子房下位の果実では、子房は花托に埋め込まれているため、子房壁と花托の組織が融合して果皮になる。この場合も、ふつうは漿果と呼ぶ。
   漿果・液果は可食部に包まれた裂開しない果実の総称として使われることがある。
 ・ナシ状果
   下位子房のビワ・リンゴ・ナシ(バラ科)では、果実の断面を見ると花托筒から発達した部分が果肉の多くを占めている。このため、
  特に「ナシ状果[pome]」と呼んで区別することもある。
 ・ミカン状果
   柑橘類の漿果では、子房室の内壁から多数の突起が成長して果汁を貯える袋となる。実際に食べられる部分は、果皮のごく一部からできるので、
  「ミカン状果」[hesperidium]と呼んで区別することが多い。
  バラ状果: 子房周位の花に由来し、子房を取り囲む花托筒(萼筒)が果肉となる
   バラ属・ピラカンサなどバラ科の一部に見られ、「バラ状果」[cynarrhodium]と呼ばれる。果実を割ると、中の空間にまわりの組織から独立した
  雌しべ由来の部分がある。
   同じバラ科のナシ状果(ビワ・リンゴ・ナシ)は、「子房がまわりの組織から独立している/いない」を除けば、このタイプと似ているところもある。
 ・核果または石果[drupe]
   子房壁のうち、外側の部分は果肉となり、内側の部分が種子を包む硬い殻となる。種皮は薄い。種子+硬い殻を「核」[kernel]という。
   ウメ・モモ・サクランボ(ともにバラ科)・オリーブ(モクセイ科)・マンゴー(ウルシ科)など。
 ・キイチゴ状果
   ナガバモミジイチゴやクサイチゴ、ラズベリー・ブラックベリーなどのキイチゴ類(バラ科)のような、多数の雌しべが核果になった核果の集合果は
  「筋子」のような外見で、キイチゴ状果と呼ぶことがある。
 ・イチゴ状果
   イチゴ・ヘビイチゴ(バラ科)などで、キイチゴ類と同様に花は雌しべをたくさん持っている。果肉は花托がふくらんでみずみずしくなったもので、
  果肉の表面についている多数のゴマ粒のようなものが子房。花被が可食部に、子房全体が硬い殻になる
   受粉の後も花被が残って厚くなり可食部になる。クワ(クワ科)・イチジク(クワ科)・ツルムラサキ(ツルムラサキ科)・ドクウツギ(ドクウツギ科)など。
   イチジクでは、つぼのような花序の内側に多数の花がついている。つまり、イチジクの実と呼ばれるのは一つの花序、中の食べる粒々の
  一つ一つが花で、壺状の部分の内側もやわらかい可食部となっている。

  種子から可食部が発達するもの
   果実をこじ開けると、中に可食部をまとった種子が詰まっている。
   熟すると果皮が裂開して種子(と可食部)が露出することが多いが、ムベ(アケビ科)のように熟しても開かないものもある。
   熱帯果実のレイシ・ランブータン(ともにムクロジ科)・パッションフルーツ(トケイソウ科)・マンゴスチン(テリハボク科)・ドリアン(アオイ科)も非常に堅い
  果皮におおわれたまま熟する。

    種子の付け根の組織が可食部となる(種衣[aril])。マサキ・コマユミ・アケビ類・レイシ・パッションフルーツ・マンゴスチン・ドリアンなど。
     種衣は平たく伸びて種子を覆うことが多いが、裸子植物のイヌマキでは、種子を覆わずにふくらむ(近い仲間のイチイでは種子を覆っている)。
   種皮の最外層が可食部となる。果肉同様にやわらかくなる場合は、肉質種皮[sarcotesta]という。ザクロ・トベラ・モクレン類・ランブータンなど。
     裸子植物のソテツやイチョウもこのタイプに属する。
     ゴンズイ・ナンキンハゼ・ジャノヒゲなどは、種皮の最外層は薄くて肉質種皮というほど柔らかくはないが可食部となる。


    子房 可食部
単果 真果 子房上・中位 中・内果皮 ナス、トマト、パパイヤ、ブドウ、カキ
中果皮 モモ、ウメ、アンズ、オリーブ、マンゴー
内果皮 柑橘類
果皮・種子 マメ類、トウガラシ
仮種皮 マンゴスチン、ドリアン
偽果 子房下位 花托 リンゴ、ナシ、ビワ
花托、果皮 ブルーベリー、ウリ類
果皮 バナナ
外種皮 ザクロ
種子 (子葉) クルミ、クリ
集合果 子房上・中位 花托 イチゴ
小果 (中果皮) キイチゴ
多花果 子房上〜下位 花托、小果 イチジク、パイナップル
食用となる果実の形式と可食部.  筑波大から



キイチゴ属とマルベリー(桑の実)の違い・・・集合果と多花果

 キイチゴ属(ブラックベリー、ラズベリー、デューベリー等)は集合果(aggregate fruit)と呼ばれ、集合果は一つの花に
 多数のめしべをもち、個々のめしべから個々の小果実が形成されることで一つの花から小果実の塊が形成される。
 それに対しマルベリー(クワの実)は小果実は個々の花から形成され、複数の花から小果実の塊が形成され、多花果
 (複合果、multiple fruit、collective fruit)と呼ばれる。両者は複合果(compound fruit)と呼ばれる。

 集合果にはキイチゴのほかにマツブサ科、バラ属、 特殊なもの:オランダイチゴ、ハマナス
 多花果ではイチジク、ヤエヤマアオキ属、ミズキ科  特殊なもの:イチジク

*集合果

キイチゴの花と果実

多花果

クワの雌花の蕾の塊と花の塊(花序)と果実


 集合果の例


Kadsura japonica(サネカズラ) マツブサ科サネカズラ属


Schisandra chinensis(チョウセンゴミシ) マツブサ科マツブサ属


Schisandra nigra(マツブサ) マツブサ科マツブサ属

学名:Hedycarya angustifolia
  科属:モニミア科ヘディカリア属
  和名:
  通称:native mulberry、Australian mulberry
  分布:オーストラリア南・東部
  事項:緑がかった花は集散花序のような総状花序。
     果実は多肉質で黄色。集合果で径6〜8mm、10〜20個の個々の小果実からなる。

Hedycarya angustifoliaの花と果実


 多花果の例

  学名:Artocarpus altilis クワ科パンノキ属 通称:breadfruit(パンノキ) 南太平洋原産

Artocarpus altilis

  学名:Artocarpus heterophyllus クワ科パンノキ属 通称:Jack fruit 特徴:種子の周囲を黄色い仮種皮が囲う。 分布:南アジア、東南アジア
 
Artocarpus heterophyllusの花序と果実及び種子

  学名:Artocarpus integer クワ科パンノキ属 分布:東南アジア(マレー半島、インドネシア、ニューギニア) 特徴:種子は仮種皮で覆われる。

Artocarpus integerの果実

  学名:Maclura pomifera クワ科ハリグワ属 通称:Osage orange 米国中南部原産

Maclura pomiferaの雌花と果実

  学名:Morinda citrifolia
  科属:アカネ科ヤエヤマアオキ属
  和名:ヤエヤマアオキ
  通称:Indian mulberry、beach mulberry、great morinda、noni、cheese fruit.
  分布:南東アジア、オーストララシア(オーストリア、ニュージーランド、その近隣の島々)
  事項:この属の果実は多花果である。

Morinda citrifoliaの花と果実

  学名:Pipturus argenteus
  科属:イラクサ科ヌノマオ属
  和名:
  通称:native mulberry、white mulberry、false stinger、white nettle
  分布:北オーストラリア
  事項:果実は多花果で球形の径6mm程度、個々の果実はナシ状で長さ方向にうねり、径1mm程度。

Pipturus argenteusの雌花と果実

   学名:Cornus florida
   科属:ミズキ科ミズキ属
   和名:ハナミズキ
   通称:flowering dogwood
   分布:北米東部、メキシコ北部原産
   事項:落葉樹で10mに達する、偽花を形成、果実は多花果。個々の花は4枚の緑がかった黄色の4mmの長さの苞をもつ。
       偽花は大きな白、ピンク、赤の苞をもつ。

Cornus floridaの花と果実

   学名:Cornus capitata 科属:ミズキ科ミズキ属 通称:Himalayan flowering dogwood 分布:Himalaya. 事項:果実は赤色、多花果で融合。

Cornus capitataの花と果実

   学名:Cornus kousa
   科属:ミズキ科ミズキ属
   和名:ヤマボウシ
   通称:Korean dogwood
   分布:日本、中国中部・北部(subsp. chinensis). 
   事項:花は偽花で花弁のように見えるのは総苞で個々の花はその中央に球状に集合。

Cornus kousaの花と果実


 特殊な果実

イチジク         バラ             イチゴ                       ヤブヘビイチゴ



            
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