肉質種皮と仮種皮
1) 肉質種皮(sarcotesta)
(1−1) 種子の構造
胚珠は珠心(nucellus)、珠皮(integument)、珠柄(funicle)などから構成され、被子植物では子房内にあり、受精により種子を形成する。
胚珠は周囲を珠皮という保護層で囲まれ、珠皮は典型的には裸子植物では1層(単珠皮性unitegmic)で被子植物では2層(二珠皮性bitegmic)である。
珠皮は完全には珠心を囲まず珠孔(micropyle)で開いている。珠心の反対側には合点(chalaza)があり、ここで珠心は珠皮、珠柄と合流する。
珠柄は胚珠と子房を結び付けており、珠柄が結び付く子房の部位を胎座(placenta)という。
珠柄は倒生胚珠や湾生胚珠では珠皮とくっついており(へそ:hilum)、合点へ伸びる背線(raphe)を形成している。
種皮(seed coat)は胚珠の珠皮 (integment) から形成される。
種皮は薄い層であったり、厚く、堅かったり、あるいはザクロの肉質種皮(sarcotesta)のように果肉質であったりする。
二珠皮性の場合、内側の珠皮を内珠皮 (inner integment)、外側の珠皮を外珠皮
(outer integment) とよぶ。
二珠皮性胚珠では外珠皮から外種皮(種皮testa)、内珠皮から内種皮tegmenが形成され 内外種皮から堅い保護機械層が形成される。
外珠皮は多くの層、一般的には4〜8層からなり3層に組織される。すなわち外表皮(outer
epidermis)、外側色素帯(outer pigmented zone:2から5層で
タンニンとデンプンを含有)、内表皮(inner epidermis)である。
3つの基本的種子部分に加え、種子は仮種皮(aril)という珠柄から生じた多肉質の付属物、あるいは油状付属物−エライオソーム、あるいは綿毛(hair)を
有することがある。
他の付属物は背線(raphe:うねridge)、翼(羽wings)、種枕(caruncle:珠孔付近の外珠皮からの柔らかい海綿状生成物)、トゲspine、結節tubercle。
ヘソhilum(子房壁あるいは珠柄についていた跡)と呼ばれる跡も種子に存在する。ちょうどその下に胚珠の珠孔を示す小さな穴がある。
(1−2) 肉質種皮
動物に被食散布される種子では、外種皮が肉質化して被食部になっているものがあり、このような種皮を肉質種皮
(sarcotesta) とよび、
ジャノヒゲ (スズラン科)、モクレン属 (モクレン科)、ザクロ (ザクロ科) などにみられる。
(以上
筑波大BotanyWEB)
種皮の最外層が可食部となる。果肉同様にやわらかくなる場合は、肉質種皮[sarcotesta]という。
ザクロ・トベラ・モクレン類・ランブータンなど。裸子植物のソテツやイチョウもこのタイプに属する。ゴンズイ・ナンキンハゼ・ジャノヒゲなどは、
種皮の最外層は薄くて肉質種皮というほど柔らかくはないが可食部となる。
(以上
福岡教育大)
肉質種皮(sarcotesta):果肉質の種皮でテスタ(testa)の1種。例はザクロ(pomegranate)とソテツ(cycad)。
ザクロの種子は珠皮integument由来の表皮細胞epidermal cellからなり、アリルはない。
(以上
英語ウィキペディア)
いつも堅い内側のsclerotesta(硬種皮)と存在。ソテツとイチョウに存在し、被子植物では
モクレン科や
マメモドキ科に存在。
sclerotestaは2層の珠皮integumentあるいはその一部から形成。 (以上
ドイツ語ウィキペディア )
Principles of Dispersal in Higher Plants(著者: L. van der Pijl)では以下のものが肉質種皮(sarcotesta)とされている。
モクレン(Magnoliaceae)科、バンレイシ(Annonaceae)科(クシロフィアXylopia属)、シキミモドキ(Winteraceae)科、デゲネリア(Degeneriaceae)科、
ビワモドキ(Dilleniaceae)科、ボタン(Paeoniaceae)科、メギ(Berberidaceae)科(Caulophyllum属、Vancouveria属)、イイギリ(Flacourtiaceae)科、
トウダイグサ(Euphorbiaceae)科、スイレン(Nymphaeaceae)科(Euryale)、センダン(Meliaceae)科、ムクロジ(Sapindaceae)科、マメ(Leguminosae)科、
アオギリ(Sterculiaceae)科、ベニノキ(Bixaceae)科、スミレ(Violaceae)科(Decorsella属、Gymnorinorea属)
単子葉類ではユリ(Liliaceae)科(Mondoideae)、アヤメ(Iridaceae)科、ヤシ(Palmae)科。
裸子植物 詳しくは→
裸子植物
肉質種皮
イチョウ、グネツム、ソテツ
イヌガヤ属
*アリル
イチイ属
カヤ属
(1−3) 肉質種皮の例
ヤシ科(Arecaceae、Palmae)
学名:Calamus rotang 科属:ヤシ科トウ属
Calamus rotangの果実と種子
学名:Metroxylon sagu 科属:ヤシ科サゴヤシ属 和名:サゴヤシ
Metroxylon saguの果実 種子(
江原から引用)
学名:Salacca zalacca 科属:ヤシ科サラカヤシ属 通称:Salak 和名:
サラカヤシ 分布:ジャワ、スマトラ 特徴:肉質種皮
Salacca zalacca
学名:Salacca wallichiana 分布:ミャンマー、タイ、マレーシア、スマトラ
Salacca wallichiana
学名:Punica granatum 科属:ミソハギ科ザクロ属 和名:
ザクロ
Punica granatumの果実と種子
学名:Carica papaya 科属:パパイヤ(Caricaceae)科パパイヤ属 和名:パパイヤ 事項:種子はゼリー状の肉質種皮に覆われている。
Carica papayaの果実と種子
学名:
Ophiopogon japonicus 科属:キジカクシ科スズラン亜科ジャノヒゲ属 和名:
ジャノヒゲ
特徴:常緑樹、果実は径5mmの青い漿果。青い果実様の部分は種子で青い色の肉質種皮に覆われている。
子房中位で子房は花被管と融合し子房は3室に別れ各室は2個の胚珠を有する。実際に種子まで育つのは1〜4個。
受精で子房は破れ発達している種子を露出する。裂開の非常に早い刮ハといえる。
Ophiopogon japonicusの肉質種皮に覆われた種子と肉質種皮を除いた種子。
学名:Ophiopogon planiscapus 和名:
オオバジャノヒゲ 分布:日本固有
Ophiopogon planiscapusの花と種子(果実のように見えるが種子)
学名:Ophiopogon jaburan 和名:
ノシラン
*種子の発達初期で果皮が破れ種子が露出する現象はメギ科ルイヨウボタン(Caulophyllum)属、キジカクシ科スズラン亜科シマハラン(Peliosanthes)属、
ヤブラン(Liriope)属でも起き、種子は肉質種皮を有する。裂開の非常に早い刮ハといえる。
Peliosanthes属は子房下位あるいは半下位で子房は3室(花柱は3溝)で各室2〜5個の胚珠を有する。(
Flora of China)
Liriope属は子房上位で子房は3室で胚珠は各室2個。(
Flora of China)
Caulophyllum属は子房上位で子房は1室で各子房に2個の種子。
Ophiopogon属は子房半下位で子房は3室に分かれ各室に通常2個、多くて6個の種子を有する。(
Flora of China)
Caulophyllum属の子房 Liriope muscariの花 Peliosanthes macrostegiaの花 Ophiopogon
ogisuiの子房
Ophiopogon fruticulosusの子房 Peliosanthes apertaの子房
学名:Caulophyllum robustum 和名:
ルイヨウボタン
事項:果皮は発達せず子房壁は発達初期で破れ種子(2個)が露出し青い色の白い粉を被った様で種皮は肉質で果実様となる。
Caulophyllum robustumの花と種子
学名:Peliosanthes macrostegia(Peliosanthes arisanensis) 和名:
アリサンヒメバラン 分布:中国、台湾、ベトナム 事項:種子は径約1cm。
Peliosanthes macrostegiaの花と種子
学名:Peliosanthes teta 分布:中国、南アジア、東南アジア 事項:種子は5〜7mm
Peliosanthes tetaの種子
キジカクシ科スズラン亜科ではヤブラン(Liriope)属も同様で種子は肉質種皮を有する。
学名:Liriope minor 和名:
ヒメヤブラン
Liriope minorの花と種子
学名:Liriope muscari 和名:ヤブラン 事項:種子は緑色から熟すると黒紫色。
Liriope muscariの花と種子
学名:Liriope spicata 和名:コヤブラン
Liriope spicataの花と種子
*以下は仮種皮とされることが多い。
学名:Connarus paniculatus
科属:マメモドキ(Connaraceae)科コウトウマメモドキ属 参照→
flora.huh.harvard.edu Connarus
事項:袋果、果皮は明るい赤、種子は黒から紫、基底部を覆う黄色い肉質は仮種皮とする場合が多いが、肉質種皮とも。
Connarus paniculatusの果実と種皮
学名:Triadica sebifera 科属:トウダイグサ科(Euphorbiaceae)ナンキンハゼ属 和名:
ナンキンハゼ
Triadica sebiferaの刮ハと白い仮種皮に覆われた種子。
学名:Ricinus communis 科属:トウダイグサ科トウゴマ属 和名:トウゴマ
Ricinus communisの果実と種子(珠孔跡に仮種皮あるいはcaruncle)
学名:Euscaphis japonica
科属:ミツバウツギ(Staphyleaceae)科ゴンズイ属
和名:
ゴンズイ
特徴:袋果、白い仮種皮というが
Euscaphis japonicaの果実と種子
学名:Theobroma cacao 科属:アオイ科(Malvaceae)(またはアオギリ科:Sterculiaceae) 通称:cacao
tree
特徴:種子を覆う白い果肉pulpは肉質種皮という。(
ケンタキー大)
Theobroma cacaoの果実
2) アリロイド・・・種皮付属物(arilloid)と仮種皮(アリル:aril)
以下
筑波大
アリロイド (種皮付属物arilloid) ・・・珠皮や胎座からできる種子の付属物で糖質や油質に富んでいる。
動物による種子散布に用いられるが、アリによって運ばれるものを特にエライオソーム
(油質体、elaiosome) とよぶ。
種枕 (caruncle) ・・・種子の先端 (珠孔付近) にある珠皮起源の付属物。
カタクリ属 (ユリ科) やスズメノヤリ (イグサ科)、トウダイグサ属
(トウダイグサ科) などに見られる。
ストロフィオール (種阜strophiole) ・・・種子のへそ (珠柄との接点付近)
付近にある珠皮起源の付属物。
クサノオウやタケニグサ、ムラサキケマン、コマクサなどケシ科に見られる。 (*筑波大から一部修正)
仮種皮 (種衣 aril) ・・・珠柄または胎座が肥厚して種子全体を覆う構造。
ニシキギ属 (ニシキギ科) やアケビ (アケビ科)、マンゴスチン
(オトギリソウ科) などに見られる。
裸子植物のイチイ (イチイ科) にもある。ふつう液質または肉質であるが、スイレン属 (スイレン科) のものは膜質である。
ニクズク (ニクズク科) のように珠孔側から発達する仮種皮を偽仮種皮
(偽種衣 arillode) ということがある。
套衣、套被 (epimatium) ・・・種鱗 (胚珠が付いた大胞子葉の変形物) が肥厚して種子を覆う構造。裸子植物のイヌマキ科に見られる。
以下
福岡教育大
種子の付け根の組織が可食部となる(種衣[aril])。マサキ・コマユミ・アケビ類・レイシ・パッションフルーツ・マンゴスチン・ドリアンなど。
種衣は平たく伸びて種子を覆うことが多いが、裸子植物のイヌマキでは、種子を覆わずにふくらむ(近い仲間のイチイでは種子を覆っている)。
Silveira
文献上では “aril”という術語は非常に議論となっている。
広い意味では種子と結びついた肉質構造を指し、しかしまた特別な解剖学定起源を指す。
受精後の胚珠の一部から発達し種子を部分的にあるいは完全に覆う、肉質から多かれ少なかれ硬い種々な構造と定義され
Corner (1976)
あるいは珠柄funiculusに起源するものをaril、胚珠の他の部分から発達する構造は arillode、false aril、aril-like構造と呼ばれる。 Van der Pijl (1972)
arilとarillodeは珠皮integumentと結びついている。 “true” aril を余分な(supernumerary)珠皮と見なす人もいる。
*レイシには前アリル組織proaril(受精前)が
認められるという。(Joubert)
アリルは後形質ではなく細胞の分化したものという。
Principles of Dispersal in Higher Plants(L. van der Pijl)140ページから
a:sarcotesta、b:完全arillode、c:部分arillode、d-1:caruncle、d-2
:strophiole、e:aril
Corner
arilは種子のいくつかの異なる部分から生じる、
珠柄(funicle)の先端 −例:Leguminosae(マメ科)、Dilleniaceae(ビワモドキ科)、Papaveraceae(ケシ科)
珠孔(micropyle)−例:Annonaceae(バンレイシ科)、Nymphaeaceae(スイレン科)、Myristicaceae(ニクズク科)、Bombacaceae(パンヤ科ドリアン属)
Celastraceae(ニシキギ科)、Sapindaceae(ムクロジ科)
合点chalazaで珠柄でない−例:Connaraceae(マメモドキ科)、Meliaceae(センダン科)、Elaeocarpaceae(ホルトノキ科),
種子の合点の反対側−例:Leptonychia(アオイ科レプトニキア属)、Sterculiaceae(アオギリ科)
(以下ウィキペディア英語版から抄訳)
アリルまたはアリルス(arillus)は種子からの特殊な生成物outgrowthで部分的あるいは完全に種子を覆う。
アリロード(arillode)またはfalse arilは、アリルが種子の子房への固着点(珠柄またはへそ)から成長するのに対し、(アリロードは)種皮の
別の場所から形成されることより区別されることがある。アリルという言葉は顕花植物での種子の多肉な付属物fleshy
appendageに使用される。
たとえばナツメグ種子のメース(Mace:種子表面の赤い付属物)。
プシドアリル(pseudaril)はアリル様構造で通常カンラン科Burseraceaeのピレナ(pyrene:核果の石)にみられ、子房の中果皮から形成される。
多肉fleshyで可食な果皮は2つに割れ、果皮がなくなると黒い種子の周りに明るく色づいたプシドアリルが現れる。
アリルは果実様構造を形成し、偽果(false-fruit)と呼ばれ、多くの被子植物に見られる。
リュウガン、レイシ、アキーなどの可食な果肉fleshは果皮層よりも高度に発達したアリルで種子を取り巻く。
アリルは裸子植物でもいくつかの種にも見られ有名なのはイチイとPrumnopitys
andina (Lleuque)、Dacrycarpus dacrydioides(kahikatea)
のような類縁の針葉樹である。(*Prumnopitys属やDacrycarpus属はepimatiumとされる。)
多くの裸子植物に典型的な木状の球果の代わりにイチイの生殖構造は1個の種子からなり、これは肉質fleshyな杯状被覆に囲まれるようになる。
被覆は高度に変容した果鱗(cone scale)である。
イチイではアリルは種子の基部の小さな緑の帯として出発し、大きくなると褐色に変化し、種子を覆い、やがて次第に多肉質になり熟すると
色は深紅色になる。
(以下
Zhangらから引用)
Euonymus planipes(
オオツリバナ)での珠皮とcaruncleの発達の様子
n:nucellus ii:inner integument oi:outer integument f:funiculus m:micropyle
ca:caruncula
Euonymus europaeus(
ラウスベリー)でのcaruncleの発達の様子 Celastrus orbiculatus(
スピンドルベリー)でのcaruncleの発達の様子
Euonymus planipes
学名:Magnolia stellata 和名:
シデコブシ 参照→
モクレン科
OI:外珠皮、Sa:肉質種皮、Sc:sclerotesta(硬質種皮)、M:珠孔 (
Uradから引用)
*プシドアリルpseudaril
プシドアリルpseudarilは中果皮mesocarpから分化differentiateする。例カンラン科(Burseraceae)
カンラン科Burseraceae
ブルセラ(Bursera)属 アメリカ大陸固有種、約100種。
学名:Bursera microphylla 分布:北米 核果様刮ハ
Bursera microphyllaの果実
学名:Bursera fagaroides 分布:メキシコ、アリゾナ州
Bursera fagaroidesの未開裂果実
学名:Bursera simaruba 分布:熱帯アメリカ 刮ハは3弁で赤いプシドアリルで覆われた1個の種子を有する。
Bursera simaruba未熟果と熟果(開裂後)
ミルラノキ(Commiphora)属
学名:Commiphora africana 分布:サハラ砂漠以南のアフリカ 事項:通常5m程度の落葉樹。果実は赤く径6〜8mm、熟する裂けて4つの赤い
指状のプシドアリル(中果皮)に保持された黒い種子が現れる。
Commiphora africanaの果実
学名:Commiphora zanzibarica 分布:アフリカ南部 事項:赤いプシドアリル。
Commiphora zanzibaricaの果実と種子
学名:Commiphora leptophloeos 分布:南米
Commiphora leptophloeosの果実と種子
プロティウム属Protium
学名:Protium heptaphyllum 分布:南米
学名:Protium opacum 分布:南米
学名:Protium spruceanum 分布:南米
Protium heptaphyllum Protium opacum Protium spruceanum
3) エライオソ−ム
以下
英語ウィキペディアの抄訳
エライオソ−ム(Elaiosome:油状体という意味)は多くの植物種の種子についている多肉質な構造で、脂質とタンパク質に富み種々な形状をしている。
エライオソ−ムはアリを引き付ける。
エライオソームは種々な方法で種子組織(合点、珠柄、へそ、背線(raphe:胚珠の縫線)とその反対側(antiraphe))、または果実組織(外果皮、花托、
花筒(flower tube)、花被(perigonium)、花柱、小穂(spicule))から発達する。
トウダイクサ科の特殊なエライオソームは種枕 (caruncle) と呼ばれる。
以下
筑波大
アリ散布 (myrmecochory) :動物被食散布の一型である。果実や種子の一部に被食部が付いており、アリによって巣まで運ばれて被食部以外が
捨てられる。果実に被食部をもつものとしてはスゲ属 (カヤツリグサ科)
やシソ科の一部がある。種子に付属物をもつものにはスズメノヤリ
(イグサ科) や ケマンソウ属 (ケシ科)、スミレ属 (スミレ科)
などがあり、この被食部をエライオソーム (elaiosome) とよぶ。
エライオソームの例
Afzelia africanaの種子 Trillium
recurvatumの種子
カルンクレの例
Ricinus communisの種子 Euphorbia peplusの種子
ストロフィオールの例
Mucuna pruriensの種子
EOL
その他の例→
火と自然の博物館 ケンタッキー大
4) エピマティウム(epimatium)
エピマティウムepimatium)はマキ(イヌマキ) (Podocarpaceae) 科の多くの種で成熟した種子のほとんどの部分を覆う高度に変容した
多肉質の種鱗である。
種子と球果の発達の間に増大し、多くの種で球果軸方向の外から種子端の珠孔に向かって取り巻くようになる。
多くの著者はイチイ(Taxus)の種套Samenmantelをアリルとし、マオウ(Ephedra)
の外珠皮をepimatiumとする。
なお針葉樹ではイチイ属の種子を覆う赤い多肉質を仮種皮とし、マキ属では種子を覆う主に緑(時には青、赤)の多肉質をepimatiumとしその根元の
赤い多肉質を花托(receptacle)と称する。 参照→
裸子植物
学名:Podocarpus totara
緑のEpimatium(套皮)で覆われた種子と赤いPodocarpium(receptacle)をもつPodocarpus
totaraの高度に変容した球果
学名:Podocarpus macrophyllus
赤いPodocarpiumと緑のEpimatiumをもつPodocarpus macrophyllusの球果
学名:Taxus baccata
イチイのアリル発達の様子:左の種子の根元の緑の帯が赤くなり、拡大し種子を覆う。このアリルはまた高度に変容した果鱗(cone
scale)とする。
5) 種々な仮種皮
学名:Guarea macrophyla 科属:センダン科(Meliaceae) 特徴:赤い仮種皮
Guarea macrophylaの果実
学名:Guarea guidonia 科属:センダン(Meliaceae)科
Guarea guidoniaの果実
学名:Paris polyphylla 科属:メランチウム(Melanthiaceae)科(旧ユリLiliaceae科)ツクバネソウ(Paris)属
Paris polyphyllaの刮ハ、赤い仮種皮で覆われた種子
学名:Bixa orellana 科属:ベニノキ(Bixaceae)科ベニノキ属 和名:
ベニノキ
Bixa orellanaの果実
学名:Xylopia frutescens 科属:バンレイシ科(Annonaceae)
Xylopia frutescensの果実と種子
学名:Xylopia aromatica
Xylopia aromaticaの果実と種子
学名:Acacia baileyana 科属:マメ(Leguminosae)科
Acacia baileyanaの果実と種子
学名:Curatella americana 科属:ビワモドキ (Dilleniaceae)科
Curatella americanaの果実
学名:Dillenia suffruticosa 科属:ビワモドキ(Dilleniaceae)科 特徴:果実はピンクで星状刮ハで赤い仮種皮の紫の種子
Dillenia suffruticosaの果実
学名:Iris foetidissima 科属:ユリ(Liliaceae)科アヤメ属
Iris foetidissimaの果実
学名:Casearia guianensis 科属:ヤナギ科(Salicaceae)
Casearia guianensisの果実
学名:Casearia sylvestris
Casearia sylvestrisの果実
学名:Casearia parvistipula
Casearia parvistipulaの果実
学名:Bocconia frutescens 科属:ケシ(Papaveraceae)科
Bocconia frutescensの果実
学名:Sloanea australis 科属:ホルトノキ(Elaeocarpaceae)科
Sloanea australisの果実
学名:Sterculia foetida 科属:アオイ(Malvaceae)科
Sterculia foetidaの果実と種子
学名:Leptonychia usambarensis 科属:アオイ(Malvaceae)科
Leptonychia usambarensisの果実
学名:Schotia brachypetala 科属:マメ科Schotia属
Schotia brachypetalaの果実と種子
学名:Pithecellobium dulce 科属:マメ科 特徴:黒い種子は赤い仮種皮で覆われている。
Pithecellobium dulceの果実
学名:Dolichos lablab(Lablab purpureus) マメ科フジマメ属 和名:
フジマメ
Dolichos lablabの果実と種子
学名:Hornstedtia alliacea 科属:ショウガ科(Zingiberaceae)
特徴:根茎植物で茎の根元(根茎)から生じる玉ねぎ状のFruit spikeをめくると個々の果実が見える。黒い種子は銀色の仮種皮で覆われている。
Hornstedtia alliaceaのFruit spikeと個々の果実
スグリ(Grossulariaceae)科スグリ(Ribes)属
スグリ属の種子と肉質種皮(sarcotesta)及び仮種皮(aril)
Ribes nigrum Ribes alpinum Ribes uva-crispa Ribes petraeum A:R.
nigrum,R. alpinum,B:R. uva-crispa,C:R. petraeum,R. rubrum
S:sarcotesta,Ar:aril,H:hilm,M:micropyle,R:raphe
(
Pilarekから引用)
ムクロジ科(Sapindaceae)
学名:Dimocarpus longan
科属:ムクロジ科ムクロジ属
和名:リュウガン
分布:
事項:
Dimocarpus longan
学名:Litchi chinensis
科属:ムクロジ科レイシ属
和名:レイシ、ライチ
分布:
事項:
Litchi chinensis
学名:Melicoccus bijugatus
科属:ムクロジ科メリコックス属
和名:マモン
分布:新世界の熱帯(中央、南アメリカ)
事項:
Melicoccus bijugatus
学名:Nephelium lappaceum
科属:ムクロジ科ランブータン属
和名:ランブータン
分布:熱帯東南アジア
事項:
Nephelium lappaceum
学名:Blighia sapida
科属:ムクロジ科アキー属
和名:
アキー
分布:
事項:
Blighia sapidaの果実と種子
学名:Paullinia cupana
科属:ムクロジ科ガラナ属
和名:
ガラナ
Paullinia cupanaの果実
学名:Paullinia pinnata ムクロジ科
Paullinia pinnata 種子は白い仮種皮に覆われる
学名:Alectryon excelsus
科属:ムクロジ科アレクトリオン属
通称:titoki 分布:ニュージーランド原産
特徴:刮ハ、種子は部分的に赤い果肉(仮種皮)に包まれる。
Alectryon excelsus
学名:Durio zibethinus
科属:アオイ科ドリアン属
和名:
ドリアン
Durio zibethinusの果実
学名:Garcinia mangostana
科属:フクギ科フクギ属
和名:
マンゴスチン
Garcinia mangostana
学名:Artocarpus heterophyllus
科属:クワ科パンノキ属
通称:Jack fruit
特徴:種子の周囲を黄色い仮種皮が囲う。
Artocarpus heterophyllusの果実
学名:Pittosporum tobira
科属:トベラ科トベラ属 参照→
ピットスポルム
和名:
トベラ
Pittosporum tobiraの果実
学名:Euonymus europaeus 科属:ニシキギ科ニシキギ属 和名:セイヨウマユミ 参照→
スピンドルベリー
Euonymus europaeusの果実
学名:Celastrus orbiculatus 科属:ニシキギi科ツルウメモドキ属 和名:ツルウメモドキ
Celastrus orbiculatusの果実
学名:Magnolia kobus
科属:モクレン科モクレン属 参照→
マグノリア
和名:
コブシ
分布:
事項:モクレン属は肉質種皮ともいう。
Magnolia kobusの果実
学名:Myristica fragrans
科属:ニクズク科ニクズク属
和名:ニクズク
通称:nutmeg
分布:
事項:
Myristica fragransの果実、種子と仮種皮
学名:Momordica charantia ウリ(Cucurbitaceae)科ツルレイシ属 和名:ニガウリ、ゴーヤ
Momordica charantiaの果実と種子
学名:Carica papaya
科属:パパイヤ科パパイヤ属
和名:
パパイヤ
特徴:種子はゼラチン状アリルで覆われる。(sarcotestaとする場合もある。)
Carica papayaの果実と種子
学名:Passiflora edulis
科属:トケイソウ科トケイソウ属
和名:
パッションフルーツ(クダモノトケイソウ)
Passiflora edulisの花と果実
(以下
Silveiraから) パッションフルーツでの仮種皮(aril)の発達の様子。珠柄(funiculus)付近から発達していっている。
学名:Akebia quinata 科属:アケビ科アケビ属 和名:アケビ 事項:落葉樹
Akebia quinataの左:雌花、右:雄花と果実
学名:Akebia trifoliata 科属:アケビ科アケビ属 和名:ミツバアケビ
ゴヨウアケビはアケビとミツバアケビの雑種という。
学名:Stauntonia hexaphylla 科属:アケビ科ムベ属 和名:ムベ 事項:常緑樹、果実は熟しても裂開しない。
Stauntonia hexaphyllaの花と果実
学名:Nymphaea alba
科属:スイレン科スイレン属
Nymphaea albaの断面 a:仮種皮 果実
シソ科クサギ属Clerodendrum 参照→
グローリーベリー
アオイ科:Malvaceae(アオギリ科:Sterculiaceae)コラノキ(Cola)属 常緑樹でアフリカに100を越える種が存在。
学名:Cola acuminata 熱帯アフリカ原産
Cola acuminataの果実と種子
学名:Cola nitida 熱帯西アフリカ原産
Cola Cola nitidaの果実と種子
学名:Cola parchycarpa 分布:ナイジェリアからガボン
Cola parchycarpaの果実
学名:Anacardium occidentale ウルシ科 通称:cashew tree 特徴:果肉の部分は
仮種皮あるいは花托(receptacleあるいはhypocarpium)という。
Anacardium occidentaleの果実
学名:Inga edulis 通称:ice-cream-bean 特徴:果実は細長く1m程度にも達する。
Inga edulisの果実
学名:Ormosia arborea 科属:マメ科
Ormosia arboreaの果実と種子
学名:Abrus precatorius 科属:マメ科 和名:
トウアズキ
Abrus precatoriusの果実と種子
以上2例は
ケンタッキー大で紹介されているが仮種皮かは?肉質ではない。
このような種子はMimetic seedと呼ばれ主にマメ亜科Papilionoideaeとネムノキ亜科Mimosoideae見られる。
6) ミューシレージ(粘液物質:mucilage)
ミクソカルピ(myxocarpy、myxospermy):ある種の種子あるいは果実は水と接触すると粘液物質(
mucilage)を生じる、粘液反応(mucilaginous reaction)
を起こす。(mucilageは極性糖タンパク質と細胞外多糖である。)例はシソ科(Lamiaceae)。
アマ属(Linum)、ミカン属(Citrus)、ナス属(Solanum)、オオバコ科(Plantaginaceae)、アブラナ科(Cruciferae)、カワゴケソウ科(Podostemonaceae)などで
見られる。
以下
ケンタッキー大
mucilageの例
学名:Ocimum basilicum 和名:
バジル
学名:Salvia hispanica 和名:
チア
学名:Hyptis suaveolens 通称:pignut、chan 和名:ニオイニガクサ
学名:Linum usitatissimum
科属:アマ科アマ属
和名:
アマ
分布
特徴:刮ハ
Linum usitatissimumの花と果実
学名:Plantago ovata
科属:オオバコ科オオバコ(Plantago)属
通称:Psyllium
分布:西アジア、南アジア
Linum usitatissimumとPlantago ovataのmucilag (
ケンタッキー大から引用)